「後」「跡」「痕」の意味の違い
【後】順序が遅い、背中の向く方
【跡】通り過ぎた・存在した印
【痕】皮膚に残る印
「後」「跡」「痕」は、いずれも「あと」と読む異字同訓の語です。
「後」は、順に続くものごとで、順序・順番が遅いほうであることを意味します。空間的にも時間的にも、順番が遅いこと、あるいは、次に続くことを広く表すときに用います。対義語は、「先」。
また、進行方向とは反対、つまり背中が向いている方(後ろ、後方)を表すこともあります。対義語は、「前」。
「跡」は、何かがそこを通り過ぎて残していった印や、何かが存在していた・行われたことを示すものとして残された印を意味します。
「痕」は、病気やけがによって傷つき、その治癒(ちゆ)後も皮膚などに残る印を意味します。そこから転じて、災難や不幸があった後に生々しく残る印を意味することもあります。「跡」で置きかえることもできます。
なお、歴史的に建物などが存在していた意味を表す場合には、「跡」のほかに「址」を用いることもあります。「大名屋敷の址」「城址(しろあと)」など。
「後」の使用例
- 順番が後になる
- 後から行く
- 後のバスに乗る〔=次〕
- 後に回す/後回し
- 後が無い〔=チャンスがもうない〕
- 後の祭り〔=時機が遅れている〕
- 後片付け
- 後から後から〔=次々と〕
- 後についていく〔=うしろ〕
- 故郷を後にする〔=離れる〕
- 後に引けない〔=譲れない〕
- 後を引く〔=影響が残る〕
- 後は野となれ山となれ〔=いまさえよければよい〕
「跡」の使用例
- 車輪の跡/足跡(あしあと)
- 容疑者の跡を追う
- 争った跡
- 進歩の跡
- 古代の集落の跡
- 父の跡を追って死ぬ
- 跡を絶たない
- 跡を継ぐ/跡継ぎ
- 工場の跡地(あとち)
- 兵(つわもの)どもが夢の跡
- 立つ鳥跡を濁さず
「痕」の使用例
- 手術の痕(跡)
- 傷痕(跡)
- 苦心の痕(跡)
- 台風の爪痕(跡)