「返る/返す」と「帰る/帰す」の意味の違い
【返る/返す】向きが逆になる、元の持ち主や状態に戻る
【帰る/帰す】本来の場所に戻る
「返る/返す」と「帰る/帰す」は、いずれもカエル/カエスと読む異字同訓の語です。
「返る/返す」は、進行する向きが逆になるというのが基本的な意味です。
そこから、物が元の持ち主のところへ戻ることや、元の状態に戻ることを意味することが多くあります。
また、単に表裏や上下が逆向きになることを意味する場合もあります。(この意味で「反る/反す」と書くこともあります。)
「帰る/帰す」は、人間が自分の家などの本来の場所に戻ることを意味します。人間以外のものについても比喩的に用いられる場合もあります。
なお、「還る/還す」もカエル/カエス と訓読みしますが、この語はひと回りして出発した場所に戻ってくるという意味を表します。この語が使用される場面は限られています(「打者が還る」「土に還る」「領土が還る」など)。
「返る/返す」の使用例
《逆向きに進む》
- 返事が返ってくる
- 我が身に返ってくる
- 跳ね返る
- あいさつを返す
- 恩をあだで返す
- お言葉を返す〔=逆らった物言いをする〕
- にらみ返す
- 引き返す
- 寄せては返す波
- 折り返し地点
- とんぼ返り
《元の持ち主・状態に戻る》
- 盗品が持ち主に返ってくる
- 覆水(ふくすい)盆に返らず〔=一度したことは取り返しがつかない〕
- お金(物)を返す
- 取り返す/奪い返す
- 正気(我)に返る
- 初心に返る/童心に返る
- 白紙に返す
- 返り咲く
《逆向きになる》
- そでを裏返す(反す)
- 沸き返る(反る)
- 手のひらを返す(反す)〔=急に態度を変える〕
- ひっくり返る(反る)
「帰る/帰す」の使用例
- 家(故郷)に帰る
- 船が港に帰ってくる
- 生きて帰る
- 親元へ帰す
- 帰り道
- 帰らぬ人となる〔=死ぬ〕